人との出会い

出会い。

日本ではあまり意識することがない。
毎日人と出会い、別れているにもかかわらず。

インドでは、この出会いを感じることが多々あった。

授業が終わってからの夕方から夜まで結構時間があったので、メインバザールを歩くことが多かった。
僕は元来の寂しがりやで、人がまわりにいないとだめなほうなのだが、インドではそれが特にひどくなった。

インドでは日本人を見るとすぐに話しかけた。
さみしいのと不安なのとで話かけずにはいられなかったのである。
日本人と話すとほっとした。
いろんな人とであったが、そのなかで特に親しくなった人が2人ほどいる。

その2人はメインバザールを歩いていたところを僕が見つけて、話しかけた。

一人はプロカメラマンのあんどうさん。30代後半くらい。
もう一人は、一人旅中の青年たかしくんであった。30歳。
2人もさっきであったばっかりだということで、意気投合して3人でメインバザールのBARにてビールをのんだ。

僕は、昼間は授業があるので、2人とともに行動はしなかったが、彼らがデリーにいる間は夕方以降にあって話をした。

プロカメラマんの安藤さんは、デリーに僕より2,3日遅く来たところで、デリーにて2,3日いて、そこからハルドワールである12年に1度の祭りが近々開催されるので、その写真を撮りに行くとのことであった。
また、その後、砂漠(タール砂漠?)に行き、らくだを購入して、砂漠の遊牧民と一緒に旅をしながら写真をとる予定だそうである。なんとも壮大な旅である。
その話を聞いて、日本で小さなことで悩んでいた自分が小さく感じた。
僕はフリーのシステムエンジニアである。安藤さんはプロカメラマンである。
僕も安藤さんも会社には属さず、自分の持っている技術で食べている人間である。しかし、安藤さんは豪快なかつさわやかな兄さんだった。

僕がこれから日本で、フリーとして生きていくか、就職するか悩んでいる話をすると、とても心に残る話をしてくれた。
「ほそたにくん。青臭いっていわれるかもしれないけど、本当に好きなことしてすごせれば最高だよね。会社に所属して、安定して仕事をすることを否定しないけど、安定すれば自然と努力しなくなる。どちらを選ぶかは自分だけど。」

「人生80年のうち、2年くらい自分の好きなことをしてすごせれば、それは、最高に幸せな人生かもね。」

これを聞いたとき、僕ははっとなった。

自分も34才になり、人にこんなアドバイスできるだろうか。小さいころ思い描いていた自分になれているだろうか。
今の僕にはできなかった。

安藤さんは、自分の会社も持っており、そこの経営は従業員に任せて、自分の取りたい写真をとって生活している。
僕もそうありたいと思った。

「ほんとに好きなことって何なんだろう」
ふとそんなことを思った。

僕のやってきたことはどれもこれも中途半場であったと思う。エンジニアだけであるまともに続いているのは。
こんな大人になりたい。いや、こんな男になりたいと思った。

もう一人のたかしくんは、30才の青年で、日本に奥さんを残して、一人旅中である。
さわやかな青年であった。
デリーのあとは北のレーという町まで行くそうである。
たかしくんは、まえにもインドに奥さんと来たことがあって、結構デリーの町も詳しいので、いろいろと教えてもらった。

夜はだいたいこの2人と一緒に行動した。
デリーの酒屋にウォッカを買いに行ったり、娼婦がいる通りを見に行ったり、BARでビール飲んだり、安食堂で飯くったりした。

いやぁ楽しかった。